表題番号:1999A-231 日付:2003/05/22
研究課題企業組織の変革と分社化
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学部 教授 井上 正
研究成果概要
 昨今、日本企業はその業績不振を回復しようと、管理システムの改革だけでなく、業務構造自体の変革をも多くの企業が手がけるようになってきている。その場合、情報処理技術の発展とも相まって、多くは本社機能の縮小を考え、業務構造の分権化を目指しているように思われる。しかしながら、この問題は突き詰めれば、集権化か分権化かという昔から議論されてきた問題であり、「分権と集権の妥協点を求めるという(企業)組織編成の基本問題」に他ならないといえる。企業の中心的課題は、既存事業を維持しつつ、新しい事業の創造、すなわち環境変化に対応して、この二つの対立する要求を満たさなければならない基本的ジレンマをどのように解決するかという問題であるとも言えるのである。それゆえ、組織構造の中にこの二つをいかにバランスよく組み込むかが企業の基本問題なのである。
 本研究では、特に分権化の一つの形態である分社化と、企業本体の内部に新たに事業部を追加する事業部制のような形態との相違は何処にあるのかといった問題を雇用関係を中心に議論した。すなわち、分社化は人的資源の利用について権限委譲をより促すという点を中心に据え分析を行った。ここで、雇用関係とは、労働者が報酬と引き替えに雇用主の指揮命令の受け入れに同意するものと考え、その結果、たとえ意思決定の権限が幾分か事前に労働者に委譲されていたとしても、雇用主はいつでも委譲した権限を、雇用関係という名の下に労働者から取り戻すことができるという点で、内部組織の拡大による分権化と、分社化の相違は説明することができると言うことが明らかになった。すなわち、雇用関係という点から、分権化の度合いというものを統一的に分析することができる可能性があるということが明らかになった。