表題番号:1999A-205 日付:2002/02/25
研究課題誤り訂正符号の軟判定復号法に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助手 小林 学
研究成果概要
 インターネット・携帯電話・衛星通信・DVD などに代表されるように、マルチメディア社会において情報通信の高信頼化を実現する誤り訂正符号化技術は必要不可欠な基礎技術となっている。誤り訂正符号に対する復号法は、通信路情報を有効に利用する軟判定復号法と、通信路情報を0,1としか扱わない硬判定復号法に大別される。
 前者の中でも、硬判定復号法の一種であり計算量の少ない限界距離復号法を、複数回用いる軟判定復号法は数多く提案されており、Chase復号法、TK復号法、KNH復号法はその代表的な手法である。これらの復号法の多くは漸近的に、最も復号誤り確率の小さい最ゆう復号法を達成するが、多くの計算量を要するという欠点をあわせ持つ。一方、限界距離復号法では通常訂正不可能となるある種の誤りを、効果的に訂正する硬判定復号法(限界距離を超える復号法と呼ぶ)が従来提案されている。私はこの復号法を効率化する手法を提案し、さらにその優れた特性を利用してこれを軟判定復号法へ効果的に応用した。その結果上で述べた従来の軟判定復号法より復号誤り確率・計算量を大幅に低減することができることを示した。この研究成果は電子情報通信学会論文誌(A)に採録されている。
 また、厳密な最ゆう復号法を実現するアルゴリズムの中でもいくつかの著名な手法として誤り訂正符号の符号化を利用する復号法が研究されている。これは通信路から受信した系列の信頼度の高い位置を情報とみなし、この情報を少しづつ変化させながら複数回符号化を行うことにより候補符号語を出力し、ゆう度が最大となる最ゆう符号語を推定する復号法である。これにより復号に必要となる平均計算量の大幅な低減が従来実現されている。このような最ゆう復号法では、すべて複数回繰り返す符号化は毎回独立に行われる。従って復号法全体で必要な計算量は符号化の計算量に比例してしまう。また符号化を行い候補符号語を求めてから、その符号語のゆう度(事後確率に比例する)を独立に求めている。そこで本研究では(1)変化させる情報系列同士の非常に強い関連を用いて、以前候補符号語として出力された符号語を利用することにより次に出力すべき候補符号語を効率良く求めるアルゴリズムの導出、(2)ゆう度を出力するパターンを集合として分割し、この集合ごとにゆう度を求めることにより複数符号語のゆう度を同時に計算する手法の提案を行った。(結果的に(1)により1回あたりの符号化に必要となるビット演算はO(n2)からO(n)に減少した。また(2)によりさらに1/3程度実数値の加減算を低減することに成功している。ここで、nは符号長を表す。)これらの成果は情報理論とその応用学会において発表を行った。今後これらの提案復号法の計算量の理論的評価を行うことが必要である。またテスト誤りパターンの出力順序を提案アルゴリズムと適するように選択することにより、より計算量を低減することができる手法を開発することは今後の課題である。