表題番号:1999A-193 日付:2002/02/25
研究課題マルチボディダイナミクスの数値解析に関する基礎的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助教授 吉村 浩明
研究成果概要
 大型化された建設機械、宇宙空間や海底探査などの極限作業に用いられるマニピュレータなどに代表されるように、マルチボディシステムの運動制御は、ディジタル技術の高度化とともに益々高機能化及び高速化が要求される傾向にある。マルチボディシステムは複数の剛体や弾性体の運動がジョイントによって拘束を受けるいわゆる拘束力学系としてモデル化され、その数学モデルは極めて非線形性の強い陰関数形式の微分代数方程式群(DAE)によって記述できる。このようなマルチボディシステムの動力学や機構解析を目的として数々の汎用計算機コードが提案されてきているが、一方でその数値解析の方法に関連して、安定性、高速化、精度保証などの基礎的な項目について十分な検討がなされていないのが現状である。そこで本研究では、主として以下の項目について調査・検討を行い、マルチボディダイナミクスの数値解析法に関する検討を行った。
① マルチボディダイナミクスのモデリング:マルチボディシステムは極めて大規模な非線形微分代数方程式群としてモデル化できる。数値解析に先立って双対原理と非線形機械回路網理論に基づく効率的な定式化の手法を提案する。
② 順動力学問題における計算の高速化:計算の高速化には系のヤコビ行列を予め陽に導出することが不可欠であり、そのための自動生成アルゴリズムの開発。本年度は、まず①について、特に超LSI回路に代表される回路網の解析で用いられる非線形回路論的な方法をマルチボディシステムに適用することを考えた上で微分幾何学的アプローチによる数学モデルの定式化を行った。すなわちマルチボディシステムに現れる運動学的、動力学的関係をNonenergic性に基づいて一組の双対な接続行列を用いて表現し、システムの配位空間の微分幾何学的な構造を明らかにした。その上で、1形式の不変性を用いて、パワ不変性を説明し、クロンのダイアコプティックスの発想を用いて複数の機械システムの接続公式を上記と同様の双対形式で導いた。合わせてLSI回路網とのアナロジにより非線形機械回路網理論を提案し、系の数学モデルである非線形微分代数方程式群に関する組織的な定式化方法を提案した。次に、上記の数学モデルの定式化によって得られた、大規模微分代数方程式群について高速スパース行列処理法を提案した。すなわち、系のヤコビ行列に関する逆行列計算の過程を、ボンドグラフ理論の因果律を用いて陽に計算する方法を提案した。特にグラフ理論を用いてパーフェクトマッチングが存在することを示して、予め記号処理などによって逆行列を解くことを可能とした。
 以上の成果の一部は、ASMEの応用力学会議における国際シンポジウム等で研究発表している。今後、これをさらに発展させて、マルチボディダイナミクスの数値解析法として確立したいと考えている。