表題番号:1999A-191 日付:2002/02/25
研究課題抗腫瘍性環状ペプチド、ウスチロキシンの全合成研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助教授 中田 雅久
研究成果概要
 ustiloxin の全合成に利用できる光学活性α-アミノ-β-アリールオキシカルボン酸の合成法として、三置換エポキシカルボン酸エステルのフェノールによる開環、引き続き行う Mitsunobu 反応による光学活性α-アミノ-β-アリールオキシカルボン酸誘導体の立体選択的合成について検討した。原料として用いるエポキシドは、対応する三置換アルケンから合成をスタートし、AD mix を用いる不斉ジヒドロキシ化、スルホン酸エステル化、塩基処理を行うことにより合成できた。この際、懸念されたエピメリ化はほとんど観察されなかった。得られたエポキシドは、酸性条件下フェノール類と反応させると、位置選択的に開環し、光学活性βーアリールオキシーαーヒドロキシエステルを与えたが、基質構造の変化により開環の位置選択性、収率が大きく変化した。また、用いるフェノールによっては反応条件で保護基の離脱等が併発し、所望の生成物を与えないことが分かった。この反応で得られたアルコールは、引き続きアジ化水素を用いる Mitsunobu 反応によりアジド基を立体反転を伴って好収率で導入できることを確認できたが、エポキシドとフェノールによってこの部分構造を構築する方法には上記の点で問題があることが分かった。
 また、四置換アルケンとフェノールの反応によるα-アミノ-β-アリールオキシカルボン酸の合成も検討した。この検討において三置換アルケンの選択的ブロモ化による四置換ブロモアルケンの選択的合成に成功し報告したが、フェノールの四置換アルケンへの付加反応は効率良く進行しなかった。
 そこで、この部分構造の新規合成法として、芳香族ハロゲン化物とアルコールの求核置換反応について検討した。芳香環上での求核置換反応は通常の条件では進行しないため、Pdなどの遷移金属を用いて行うが、この場合、アルコールが三級アルコールであるため、強塩基性条件下、長時間反応を行う必要があり、本化合物の合成を行う上で適当な反応条件ではない。そこで、オルトフルオロニトロベンゼンがアルコールと求核置換反応を起こすことに着目し、三級アルコールを用いて反応を行ったところ、KHMDSを用いると速やかに求核置換反応が進行し、所望の生成物を与えることが確認された。