表題番号:1999A-189 日付:2003/05/09
研究課題カテコールにより化学修飾したチタンアルコキシドの合成とそのセラミックスへの変換
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 菅原 義之
研究成果概要
 チタンアルコキシド(Ti(OR)4)は一般に加水分解が早く、ゾルゲル反応の前駆体として用いるためには、反応の制御が必要である。そこでβ-ジケトン類等の脱離しにくい官能基による化学修飾が従来行なわれてきた。本研究では、新しい化学修飾剤としてカテコール(C6H4(OH)2)に着目し、カテコールにより化学修飾したチタンアルコキシド(R=Et 、tBu;カテコール/Ti=1)からのチタニア(TiO2)の合成について検討した。チタンアルコキシドのベンゼン溶液に、カテコールのベンゼン溶液をゆっくり滴下したところ、カテコールの2つのOH基が消失したことが赤外吸光分光分析により明らかとなった。さらにNMR測定においては、カテコレート(C6H4O22‐)に帰属可能なシグナルが、アルコキシル基のものに加えて観察された。また、反応によりアルコキシル基がアルコール(ROH)として脱離したことが明らかとなった。以上の結果から、アルコキシル基とのアルコール交換反応によりカテコールがカテコレート基の形で構造中に導入され、キレート環を形成したものと推定された。R=Etの場合はNMRシグナルがブロードとなっており、高分子化が進行していたものと考えられたのに対し、R=tBuの場合ではシグナルのブロード化は認められなかった。そこで、R=tBuの場合について生成物の分子量測定を凝固点降下法により行ったところ、生成物は主に2量体として存在したことがわかった。耐加水分解性を調査するためにTiに対して100倍の水を加え、THFを溶媒として反応を試みた。通常のチタンアルコキシドでは沈殿を生じるのに対し、カテコール修飾した化合物では均質溶液のままであった。加水分解された溶液の1H NMR測定から、アルコキシル基/カテコール基比はほぼ1であり、修飾時の理想的な値2から大きく減少していた。加水分解していない溶液を空気中600℃で熱処理したところ、チタニアがアナターゼとして結晶化した。