表題番号:1999A-186 日付:2002/02/25
研究課題遠心型気体機械の静粛化に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助教授 太田 有
研究成果概要
 遠心型気体機械の代表例である送風機を対象として、発生騒音の主要成分である翼通過周波数(BPF)成分の音源部位を考慮した静粛化法を開発し、その有効性を実証した。まず、音源と考えられていた渦形室舌部近傍の壁面圧力変動と外部騒音圧変動との間で相関解析を行うことで、BPF1次および高次成分の有効な音源領域を確定した。音源領域は舌部近傍のごく限られた領域に限定されていること、およびBPF1次成分と高次成分では音源領域が微妙にずれていることが明らかとなった。それぞれの音源部位に圧電型振動子を直接取り付けることで、音源の圧力変動に対して逆位相となる信号を付加し、BPF1次成分と高次成分をそれぞれ独立に15dB以上も低減できることを示した。これにより、送風機外部騒音スペクトル中に認められた顕著な分離成分ピークは広帯域成分レベルに埋没する程度に減衰し、送風機系全体を効率良く静粛化することが可能となった。この際、音源の圧力振幅が大きい1次成分に関しては、圧電型振動子の直接加振のみでは十分な振動加速度が得られなかったため、板バネの特性を生かし、てこの原理を用いた変位増幅機構を設計製作し、実験に使用した。上記の実験より、1次成分と高次成分の音源領域がわずかにずれていることが明らかとなったため、2成分を同時に加振することで、分離成分の同時静粛化を指向した。これにより騒音スペクトル中の複数個の離散成分はほぼ完全な形で除去することが可能となった。しかし、高次成分の制御時には非制御下の音圧レベルが逆に数dB上昇してしまう現象が確認された。この結果より、BPF高調波成分の発生機構に関して、羽根車吐出流と渦形室舌部とのポテンシャル干渉のような線形現象に起因するものではなく、舌部表面上で誘起された微細な移流渦などが原因となり発生する非線形的な音響現象であることが明らかになった。今後は本研究で開発した制御法により得られた減音量と、騒音伝播経路の周波数特性との関係を詳細に実験することで、能動的制御法と送風機幾何形状を変化させることによる受動的制御法を組み合わせた有効な騒音低減化法を提案することを研究の焦点としたい。更に、数値解析によりBPF成分の有効音源領域がどのように決定されるのかに関しても調査を行う予定である。