表題番号:1999A-184 日付:2002/02/25
研究課題反応拡散方程式系および関連する楕円型方程式系の解集合の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 山田 義雄
研究成果概要
 本年度の研究成果は Lotka-Volterra 型反応拡散方程式系の正値定常解の研究と sublinear 項を伴う半線形放物型方程式に対する比較定理の研究の2つに大別される。
(I) Lotka-Volterra 型の競合モデルに対する反応拡散方程式系の正値定常解は、数理生態学分野においては共存解として大きな意味がある。本研究においては同次ディリクレ境界条件下で共存解が存在するための十分条件を調べるとともに、その一意性・非一意性や安定性について理論的および数値解析的両観点から調べた。とりわけ線形拡散のケースで相互作用の強さを表す係数がある一定の条件をみたすとき、共存解が複数個現れる可能性のあることが明らかになった。より詳しく述べると、2つの拡散係数をパラメータ空間内の点とみなすと、必ず共存解が2個以上現れる範囲のあることを示すことができた。これは、正値定常解の多重性に関する既存の結果に新しい視点を与えるものとなっている。また、空間次元が1の場合に限定すると、相互作用の係数が非常に大きい場合には解の多重性について非常に詳しい情報が得られることも判明してきた。さらに数値解析によって正値定常解を構成するために、従来はいわゆる shooting method を用いてきたが、微妙な解析において精度が低かった。これを改善するために新しい方法として Newton 法を応用したスキームを試みている。
(II) sublinear 型の反応項を含む半線形放物型方程式については一般には解の一意性が成立しなくなる。そこで滑らかな関数 f と指数 0<q<1 に対して同次ディリクレ条件のもとで
∂u/∂u=Δu+u+f(u)
の形の方程式に対する非負値解を考え、優解と劣解による比較定理を証明することに成功した。この結果、対応する定常問題の正値解の安定性・不安定性に関し有用な情報が得られる。例えば、空間次元が1のときには上記方程式の正値定常解は相平面の方法ですべて構成することができ、各解の形状も明らかになる。比較定理を適用することにより、それぞれの定常解の安定性、より詳しくは漸近安定性や不安定性を調べることができる。