表題番号:1999A-179 日付:2002/02/25
研究課題異質な情報モードの融合と高度ヒューマンインターフェースに関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 松山 泰男
研究成果概要
 本研究で扱うマルチモード情報とは、人体の表情やその他の生体信号を指している。マルチモーダルな情報を扱う場合には、広範な能力をもつ手法が必要とされており、このような問題に対しては、EMアルゴリズムという統計的手法がよく利用されている。しかしながら、このEMアルゴリズムは、モデルの対数尤度を最大化するアルゴリズムであり、収束速度の向上が必要であるとされていた。そこで、まず従来の対数の拡張を見つけだすことを行い、これをα対数と命名した。そして、このα対数を用いた期待値最大化を行うと、α-EMアルゴリズムという一般化された手法が得られ、従来の、EMアルゴリズムをα= -1という特例として含むことが分かった。さらに、適切なαに対しては、従来のEM法を遙かにしのぐ高速学習性が得られた。
 次に、上記のような理論的部分に続いて、α-EMアルゴリズムの下部構造であるベクトル量子化と自己組織化とを結合させたシステムを構築した。これは、外部からの指令に基づいて顔の筋肉を動かすものであるが、(i) 顔のテクスチャが、情報圧縮されていること、(ii) 実時間で動く表情を実現できること、(iii) 3次元の表現となっていることにおいて従来の手法よりも進んだものとなっている。
 次に、ICA(独立成分分析)のための高速化法についてその可能性を発見したので、これについても調べ、大きな成果を得ることができた。本研究においては、研究代表者が導き出したα対数に基づく情報量の繰り返し最小化を行い、モーメンタム法とターボ法の2つのアルゴリズムを得ている。そして、それらについて実験を行ってみると、モーメンタム法は従来法より3倍程度そしてターボ法では6倍程度という著しい高速性を示すことが分かった。
 以上のように、本研究は、当初の目的の他にも大きな成果を得て終了した。