表題番号:1999A-176 日付:2004/09/21
研究課題潜熱蓄熱材の一次核生成に及ぼす超音波の影響
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 平沢 泉
研究成果概要
 申請者は、特定課題(研究課題番号99A-176)の助成を受け、潜熱蓄熱材の一次核発生に及ぼす超音波の影響について、研究を行った。潜熱蓄熱材は、夜間の余剰エネルギー、未利用の熱源を、回収する材料として、注目されている。しかしながら、この材料を融点以下に冷却しても、融液が過冷却状態で、安定化し、結晶が生成せず、熱の放出過程が不安定になる。このような状況を解消するために、核発生を促進する発核剤の研究がなされているが、蓄熱容量が大きな材料では、しばしば発核剤がなく、蓄熱剤としても適用が見送られていた。そこで、申請者は、発核を促進される手段として、超音波の適用を提案し、リン酸1水素2ナトリウム・12水和物を対象に、超音波照射が、核発生に及ぼす影響について検討した。実験は、恒温槽に浸漬した超音波センサー付き回分晶析槽を用いて行い、所定の過冷却度に調整した融液に、20kHZの超音波を照射強度を変化させて照射し、核化・成長の過程を観察するとともに、核発生のための待ち時間、初期の発熱速度を実測し、超音波照射の核生成に及ぼす影響を解析した。この結果、超音波を照射した場合、融点36℃で、100%の発核確率で、一次核生成が生起し、超音波照射無しでは、発核のために17-23℃の過冷却度を要し、発核確率も分布を持った。また、核発生のための待ち時間は、超音波出力と反比例の関係となることを見いだすとともに、核化に必要な最小照射強度が存在することを明らかにした。さらに、初期の発熱過程について解析し、初期の発熱速度が、一次核の発生速度と比例する概念を導出し、照射強度により一次核発生速度が制御できることを提示した。本研究により、リン酸1水素2ナトリウム・12水和物を蓄熱材に用いた場合、超音波照射により、過冷却度0℃で、核化させることが可能となり、照射強度により、発熱過程も制御できるという新規な知見を見いだした。