表題番号:1999A-175 日付:2002/02/25
研究課題ピストンリング列の連成スターブ潤滑に関する実験的・理論的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 林 洋次
研究成果概要
本研究では、スターブ潤滑下におけるピストンリング列の潤滑問題を取り上げ、またフラッド潤滑下では現れない複数ピストンリングの連成作用に着眼して、以下の研究成果を得た。
(1)実験的研究においては、ピストンリングに供給する潤滑油の流量を制御し、かつピストンリングの幅方向に均一に供給するために、リング状のピストンリングと円筒形状のシリンダ壁を展開し、透明なアクリル樹脂で製作した棒状のピストンリングを直動転がり軸受に装着して往復動運動をさせ、平板のシリンダ壁との間の各時刻での油膜の挙動を写真撮影し、渦電流方式の非接触変位センサによって膜厚変動を測定して、ピストンリング列のスターブ潤滑メカニズムを明らかにした。
(2)理論的研究においては、スターブ潤滑下のピストンリング列に対する潤滑理論を新規に構築して、その潤滑メカニズムを理論的に解明した。本研究では、複数のピストンリングに対して、潤滑油が第1ピストンリングから第2ピストンリングへまた運動方向が逆転した時は第2リングから第1リングへと順次供給される際に、シリンダ壁に付着して保持される潤滑油ならびに新しい潤滑油は重力の影響によって一方向しか供給されないことも考慮して、各ピストンリングの入口部および出口部における油膜の境界条件を、上下死点や上昇下降行程に対してそれぞれ新しく提案した。これらの境界条件のもとで複数の偏微分方程式の潤滑方程式を連立させ、初期値境界値問題としてコンピュータによって数値解析した。ピストンリングの往復運動に対して、初期条件に依存しない恒常的な変動状態を算出して、油膜挙動、油膜厚さ、油膜圧力、摩擦力などに及ぼすピストンリング列の連成スターブ潤滑効果を理論的に求め、前述の実験結果と比較検討した。