表題番号:1999A-174 日付:2002/02/25
研究課題GL(2)型の代数曲線の構成と数論研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 橋本 喜一朗
研究成果概要
楕円曲線に対する「谷山-志村予想」は昨年完全な解決が得られ、その後の目標は高次元のアーベル多様体に対する予想の一般化に移行した。
Serre-Ribet により「アーベル多様体 A/Q が J_1(N) の Q-因子と同種となる条件は、A が GL(2) 型であることである」という予想がある。本特定研究では GL(2) 型のアーベル多様体を組織的に構成分類するという、基本的なアプローチから研究を進めた。
具体的な研究成果は以下の通りである:
(1) 2 元 6 次形式 f(X,Y) の空間に於ける PGL(2)作用(対称テンソル表現)を調べ、楕円曲線の二重被覆をなす種数 2 の曲線の最も一般的な方程式族が得られた。この特殊化により、曲線族 C(j)でそのヤコビ多様体が 2 次体上では 不変量が j の Q-曲線の積に分解するものを具体的に構成した。
その結果、j が有理数のとき、JacC(j) は 「擬 GL(2)型」なることが判明した。
(2) 上記ヤコビ曲面 JacC(j)/Q は殆んどの j に対して modular であることを示し、対応する保型形式の Neben type character を決定した。
(3) 以上の研究をモデルとして、有理数を j-不変量に持つ 2 次体 k 上の楕円曲線(Q-曲線)の数論に体する一般理論を構築した。即ち、その minimality および k 上の 2 次 twist に体する sign change という現象を明らかにした。特に、各 j に対して この様な Q-曲線の類と k を含む 4 次巡回体が 1 対 1 に対応することが示された。
(4) 非自明な実指標を持つ 尖点形式 f(z)でその Fourier 係数の生成する体が 2 次体が ガウスの数体であるもの(N=37,65,104,157,397,877)に対して、志村のアーベル曲面 A(f)/Q のモデルとして Q上の種数 2 の代数曲線で ヤコビ多様体が A(f) と 代数体上同種なものを具体的に求め、対応する 尖点形式を 4 変数の正定値二次形式のテータ級数として具体的に求めた。
(5) Q上の自己準同型環が 判別式 8 の二次体の整数環となる曲線の族を構成した。