表題番号:1999A-171 日付:2002/02/25
研究課題理工系大学における化学系研究室の有害化学汚染物質の実態調査とその対策に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 名古屋 俊士
研究成果概要
 大学やそれに附属する研究機関においては、一般企業と異なり、化学物質を取り扱う研究室等でも測定義務の無いのが現状である。そのため、化学物質にどの程度曝露しているのかを正確に把握する事が出来ず、時として、中毒症状までには至らないまでも、それに近い曝露を受けながら学生や研究者が研究を行なっている可能性が考えられる。
 現在、早稲田大学理工学部における化学物資の取扱い状況は、ベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン等がその代表である。それら化学物質の内、四塩化炭素、ベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタンを取り扱っている研究室において測定を実施し、化学物質汚染の現状を評価した。
 四塩化炭素、ベンゼン及びクロロホルムを取り扱う研究室では、換気装置が設置当初の性能を維持した状態であれば、現状では大きな問題の無い事が明らかとなった。しかし、ジクロロメタンを取り扱う研究室の場合、通気の有る通常状態で、環境測定はまあ良好と評価できたが、実験担当者の曝露濃度からは、環境改善を必要とする評価を得た。実操業の作業場と異なり実験時間、薬品取扱い時間等から考えるとこうした測定で対策が必要と評価される事は、根本的な対策が必要と考える。今回測定を実施した研究室は、理工学部の一部の研究室に過ぎず、まだ多くの研究室では有害化学物質に曝露されながら実験を行っている学生がいるものと予測される。
 一般企業においては、作業者を職業性疾病から守る為に日夜努力を行なっている。大学の学生に対して実験等に伴う疾病から目を背けて良いはずが無いと考える。学生の場合、研究室での実験時間が一般企業の労働時間に比べて短いことや研究室での在籍年月も1年~3年と短いことも有り、化学物質による疾病の事例は少ないものの、近年の様に、ダイオキシン類に代表される体内蓄積性のある化学物質等の実験では、学生、特に女子学生の卒業後にその影響が出ないと言う保証はないと考える。化学物質を取り扱う研究室では早急に実態調査を実施すると共に、評価に応じた対策及び学生への教育を行う必要があると考える。