表題番号:1999A-163 日付:2002/02/25
研究課題マイクロ波プラズマCVD法による超薄膜多層構造膜を用いた導波型光デバイスの作製
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 加藤 勇
研究成果概要
 当研究室では、二重管式同軸線路型マイクロ波プラズマCVD装置をもちいて、新しい光子材料として超薄膜多層構造をもつa-Si:H/Si3N4多層膜について研究開発をおこなってきている。二重管式同軸線路型マイクロ波プラズマCVD装置をもちいて、低ガス圧下において水素化アモルファスシリコン膜および窒化シリコン膜による超薄膜多層構造の作製に成功し、これまでの研究で基板温度が約250[℃]で最も鮮明な多層構造膜が得られることがわかり、さらに1層の厚さを数Å単位で制御できることがわかった。また、光学的にもアモルファスシリコン層の厚さを変化させることで、光学的エネルギーバンドギャップを1.8~2.5[eV]と制御できることもわかった。
 導波光の波長λよりも十分に薄い超薄膜多層構造をもつ光導波路は、特異な伝搬特性をもつことが期待できる。そこで我々は、上記のa-Si:H/Si3N4超薄膜多層構造膜をコア、窒化シリコン膜をバッファ層としてスラブ導波路を作製し、光が導波することを確認した。さらに、本導波路の持つ伝搬特性として、TMモードを透過し、TEモードはカットするという偏光特性があることを世界ではじめて明らかにした。これは、導波路への入射光のTEモード成分が、光の波長オーダーよりも十分に狭い間隔で並んでいる金属的なアモルファスシリコン層の格子によって反射されるためであると考えられる。なお、導波光としては光ファイバ通信などで用いられる波長1.55[μm]のレーザ光をもちいた。また、各層の厚さを変化させ最適な条件を調べたところ、アモルファスシリコン層の厚さが約5[nm]、窒化シリコン層の厚さが約10[nm]のときに消光比17[dB]を得た。
 さらに我々は、上記のスラブ導波路を超高輝度青色LEDを照射して光ポンピングをおこなった。光ポンピングをおこなうと、TMモードの透過光は増加し、TEモードの透過光は減少し、消光比としては3~4[dB]程度大きくなるという結果を得た。以上より、本光導波路はモードフィルタだけではなく、光スイッチングデバイスや変調デバイスへの応用も可能であることを示した。