表題番号:1999A-160 日付:2002/02/25
研究課題無機絶縁体薄膜の構造欠陥とその電気特性・光学特性への影響
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 大木 義路
研究成果概要
 近年LISデバイスの微細化・高機能化・低電力化に伴いトランジスタのゲート酸化膜に使われてきたSiO2が物理的限界まできている。またキャパシタにおける静電容量の確保といったさまざまな問題がこの分野において浮上してきている。そのため、SiO2より高誘電率であるSi3N4, Ta2O5の利用が考えられている。そこで半導体デバイス各種用途に用いられる無機絶縁体薄膜の欠陥構造とその電気特性・光学特性への影響について過去に我々がSiO2に対して用いた研究手法と同様の手法を用いて研究を行ってきた。すなわち、Si3N4については、フォトルミネッセンス法によりバンド端の局在準位から電子・正孔の再結合による2.6eVにピークを持つ発光が観測された。この発光現象から局在準位の状態を考えることが可能である。また、成膜法による発光スペクトルの差やイオン照射や熱アニールを施したときの発光量の変化から水素離脱によりバンド内部に準位を形成する欠陥が生成されること明らかになった。バンド端の局在準位を介してPoole-Frenkel伝導により漏れ電流が流れていると考えられるデータも得られていることから、Si3N4における局在準位がその電気特性・光学特性へあたえる影響が明らかになった。Ta2O5においては漏れ電流が最大の問題点であるが、オゾン処理を施すことにより減少させることができた。この機構を探るために電荷トラッピング特性を高周波容量測定法により調べた。その結果、オゾン処理により電子捕獲準位の減少を確認し、さらに正孔捕獲準位の生成が明らかにされた。Ta2O5は基本的に電子性伝導であることからこの電子捕獲準位の減少が漏れ電流低減の理由と考えられる。これらの成果は、裏面に記載した各論文が掲載されているほか、現在、2篇の関連論文を執筆中である。