表題番号:1999A-157 日付:2002/02/25
研究課題超臨界条件下における鉱物と熱水間における金属元素の分配実験
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 内田 悦生
研究成果概要
 磁鉄鉱とイルメナイトを用いて超臨界熱水溶液との間におけるFe、Mg、Ni、Co、Zn、Mn2価イオンの分配に関する実験を行った。実験温度は500、600、700および800℃とし、圧力は1kbに固定した。固相出発物質と各種イオンを含有した1mol/lの塩化物水溶液とを金チューブに封入し、標準的なテストチューブ型高圧反応容器を用いて反応させた。反応期間は温度により異なり、5日から7日とした。反応終了後、固相と液相を分離し、固相はエネルギー分散型X線マイクロアナライザーを用いて、液相はICPプラズマ発光分光分析装置を用いて分析した。実験結果を分配係数―イオン半径図(PC-IR図)にプロットし、考察を行った。
 実験の結果、磁鉄鉱およびイルメナイトともにCoとFeの中間に頂点を持つ放物線が描けたが、磁鉄鉱の方が急なカーブが描けた。また、温度の上昇に伴い放物線のカーブは緩やかになるとともにその頂点の位置は若干イオン半径の小さくなる方向に移動する傾向が見られた。ただし、NiとZnに関してはこれらの傾向とは異なる挙動を示し、Niに関してはその6配位選択性の、Znに関してはその4配位選択性のためであると解釈される。
 また、実験結果に対して溶存種を考慮に入れて熱力学的な考察も行った。計算の結果、実験条件下ではほぼすべての金属イオンが塩化物中性溶存種として存在していることが分かった。また、従来当研究室で行われたこれら2鉱物と塩化物水溶液との間におけるイオン交換平衡実験との整合性を調べたところ両実験結果はほぼ一致していることが分かった。