表題番号:1999A-154 日付:2005/03/23
研究課題界面活性剤による地下水汚染浄化に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 在原典男
(連携研究者) 大学院理工学研究科 修士課程学生 岡野裕史
研究成果概要
 石油系燃料及び有機塩素系溶剤などの汚染物質は、わずかであるが水に溶ける性質をもっており、地下に入りこむと多量の地下水を汚染する恐れがある。本研究では、地層断面装置による実験ならびに数値シミュレーションモデルの開発を行い、汚染物質の挙動を評価するとともに、汚染流体の流動拡散現象の影響を調べることを目的とした。
 地層断面装置(フローセル)を用いた地下汚染実験では、フローセルに3種類の砂を層状に充填し、ポンプを使用して水で飽和させたのち、NAPL(トルエン)を背面孔より注入して地下水の汚染状態を作ったのち、地下水の流速を変化させて汚染状態の変化を観察した。トルエンは地下水の流れに従うとともに、移動比重が軽いため地下水中においても上方へ移動することが確認された。
 数値シミュレーションモデルの開発では、3相3成分の流動現象の定式化、有限差分法による離散化、及びプログラムのコーディングを行い、2次元及び3次元問題へ適用し、移流・拡散・分散・吸着の影響、及び飽和帯・不飽和帯・毛管水帯における汚染物質の挙動を推測した。モデルは、3相(ガス, 水, NAPL)3成分(水, 空気, 汚染物質)とし、汚染流体の流動メカニズムとしてポテンシャル勾配による移流、濃度勾配による拡散、孔隙及び地層の非均質性による分散を考慮した。多相間の熱力学的平衡が成り立っていると仮定して、3相間の質量移動をヘンリーの法則などにより決定した。また、汚染物質の岩石表面への吸着現象も考慮した。シミュレーションによる計算結果を解析解により検証することにより数値シミュレーションモデルの有効性が確認した。移流・拡散・分散・吸着について、それぞれのモデルによる計算結果から現象の特徴及び影響の大小を評価することができた。実験データ及びフィールドデータを考慮して、実例に合わせたシミュレーションを行うことが今後の課題とされる。