表題番号:1999A-142 日付:2002/02/25
研究課題裁量的発生項目と会計利益マネジメント
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学部 助教授 河 榮徳
研究成果概要
 現行の会計制度のもとで、経営者は会計処理方法の選択や会計推定値の変更などをつうじて、会計利益を操作することができる。一方、キャッシュフロー(とくに営業活動によるキャッシュフロー)は、経営者の意図により調整することは比較的に難しい。会計利益とキャッシュフローの差額として発生項目(accruals)を測定することにより、経営者の会計利益マネジメント(earning management)の結果を包括的に捉えることができる。
 利益マネジメントの実態を解明するためには、裁量的発生項目を推定するモデルの開発が必要となる。本研究では、発生項目の推定モデルに関する先行研究をレビューし、日本に適したモデルの開発を試みた。従来の研究方法と異なり、本研究では、発生項目の測定において、業種別のクロスセックション・データをも用い、パネル分析を行った。
 分析に必要なデータの収集:1997年4月から1999年3月の間、東京証券取引所の上場企業のうち、業績予測に関するファイリングを行った企業をサンプルとして選定し、業績予測値と実績値の資料を収集した。会計利益(経常利益、純利益)、営業活動からのキャッシュフロー(現金預金、売上債権、仕入債務、棚卸資産、流動資産、流動負債、減価償却費、引当金)、資産総額、固定資産、売上高、株価、発行済み株式数などのデータは日経Needs財務データファイルと東洋経済データバンクの株価ファイルから収集した。
 分析モデルの選定:収集したデータをもとに、分析モデルとして、Healy [1985]モデル、DeAngelo [1986]モデル、Jones [1991]モデル、およびDechow, Sloan & Sweeny [1995]の修正Jonesモデルを比較評価した。分析には、統計パッケージTPSを使用して、パネル分析を行った。
 分析結果、モデルの説明力は、修正Jonesモデルがもっとも高く、続いてJones [1991]モデル、DeAngelo [1986]モデルの順であり、Healy [1985]モデルの説明力はもっとも低かった。