表題番号:1999A-141 日付:2004/11/02
研究課題親会社取締役と子会社間の取引と法的規制の在り方
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学部 助教授 中村 信男
研究成果概要
本研究は、わが国の商法では十分な立法的対応が行われていない親会社取締役と子会社間の取引について、子会社の利益、すなわち子会社の少数株主または債権者の利益保護の観点から、どのような法的規制が用意されるべきかを探ろうとするものであった。他方で、親子会社間では取締役の兼任がしばしば見られるために、親会社取締役と子会社間と取引をあまり厳格に規制すると、グループ間の取引に支障をきたすおそれもある。本研究では、一方では子会社の利害関係人の利益に留意しつつ、他方でグループ間取引をいたずらに制約しないようにするという政策的配慮も働かせつつ、わが国における立法の方向性を探った。ちなみに、この面ではイギリス会社法がすでに比較的詳細な立法的対応を行っているため、それも参考にした。さらに、親会社取締役が子会社と取引を行い、それによって子会社の利益を害することがありうるが、その際、子会社取締役は親会社取締役の指示に逆らえず、これに従って、不利益取引を行うこともあるであろう。そうすると、そのような指揮・指図により子会社に損害を与えた親会社取締役の法的責任も問題となりうるが、この点については、わが国の判例にも登場した事実上の主宰者の責任法理により責任追及が可能になるものと思われる。