表題番号:1999A-140 日付:2002/02/25
研究課題日本型システムの研究-『ジャパン・アズ・ナンバーワン』の時代から現在まで-
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学部 助教授 宇田川 博
研究成果概要
 99年度特定課題研究助成を受け、エズラ・ヴォーゲル著『ジャパン・アズ・ナンバーワン』(1979年)を過去から照射点として、現在の日本型システムの有効性と限界を明らかにする諸論文を発表した。『ジャパン・アズ・ナンバーワン』で肯定的に叙述された日本型経営システム・日本型企業システムに関する歴史的研究は、①「日本型システムの研究―『ジャパン・アズ・ナンバーワン』の時代から現在へ(2)―日本的経営と集団主義―」、②「日本型システムの研究―『ジャパン・アズ・ナンバーワン』の時代から現在へ(3)―「総合利益」「フェア・シェア」の理念と高コスト構造―」で為された。日本型システムの終焉が喧伝される今日にあって、集団主義的企業システムと高コスト構造が問題とされることが多い。① ②では、これら二つの特徴が終身雇用・年功賃金といった雇用制度と相俟って、「長期性」の理念に立脚した日本型システムを構築し短期的収益性の追及と齟齬を生じる問題点が明らかにされた。
 以上の両者においても現在の日本型システムとのリンクが試みられたが、それを主題的に論じたのが③「日本型システムの研究Ⅱ―99年度年次経済報告(経済白書)に読む日本型システムの問題点―」である。99年度白書は、冷静に日本型システムを分析し、キャッチアップの方向性を明確に否定するなど、短絡的な論調に陥っていない点で高く評価できる。しかし90年代不況と日本経済の構造的問題との関係という根本的論点については、前記の長期性/短期性の観点から疑問が提出された。本論ではとりわけ労働経済の観点を導入して、「二つのR」(リスク、リストラ)を吟味したことも、日本型システム研究として有益であった。上記三論文を通じて、今後続行する日本型システム研究の展望があきらかになったものと思われる。