表題番号:1999A-139 日付:2006/10/20
研究課題戦前期日本企業の設備投資・企業金融・コーポレート・ガヴァナンス
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学部 教授 宮島 英昭
研究成果概要
本研究計画は、これまで筆者が開発してきた分析枠組みを利用し、従来の研究でも未だ空白にとどまっていた戦前期の企業行動の分析に焦点をあてた。日本経済史研究は、戦間期の企業の設備投資、企業金融について研究を蓄積してきたが、その多くは財閥、あるいは大紡績企業等の記述資料に基づく個別分析に終始し、例えば、第1次大戦期の資金調達が間接金融と特徴づけられるのか、あるいは、資本市場に依存していたのかすら決着をみていない。本研究の課題は、個別企業の財務デ-タを積み上げながら、戦間期の企業金融・設備投資・コ-ポレ-ト・ガヴァナンスに関する基本的な事実を確認し、その上で申請者が構想する動学的経済成長論の枠組みから、その全体像を解明する点にあり、具体的な課題は以下の点にあった。
1) 投資関数の推計;設備投資に対する流動性制約に注目した投資関数の計測を試みる。その際、各企業のガバナンス特性、および、生産物市場の動向を明示的に計測式に組み入れ、対外関係が比較的自由であり、また企業行動を規制する枠組みが自由主義的であった戦前期の投資行動の特性を解明する。この点の研究の結果は、2000年度の社会経済史学会で報告される一方、英文でワ-キング・ペ-パ-を作成した。また、この成果は、筆者の博士請求論文の第4章となった。
2) 資金調達; 戦前の自由な環境の下で企業は、厳格な規制下にあった戦後期とは異なって、負債選択について多くのオプションをもっていた。本研究では、申請者が開発したモデルをこの時期の資料の制約にあわせて修正しながら、各企業の負債選択を、企業の将来収益とリスク及び企業のガバナンス特性に回帰するモデルを通じて分析する。
3) ガバナンス:各企業のガバナンス特性は、企業の設備投資、負債選択を制約するばかりでなく、その結果として、変化する。本研究では、戦前期のガバナンス特性の変化を、設備投資・負債選択で説明するモデルを開発し、その定量分析を試み、戦前期のガバナンス特性の変化を追跡する。
以上の2)、3)の成果は、筆者の博士請求論文の第5章に組み込まれた。