表題番号:1999A-138 日付:2002/02/25
研究課題組織能力と組織デザイン
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学部 教授 藤田 誠
研究成果概要
 本年度は、これまでの研究経緯を踏まえて、組織能力と組織デザインの概念的な整理をするとともに、定量的実証研究のための予備的な聞取り調査を行った。その成果は、すでに経営行動研究学会での口頭発表と学会誌論文として発表済みである(論文は現在校正中)。その内容の要約は以下のとおりである。
 経営戦略論の分野では、企業・組織の競争優位性の源泉として組織能力に注目する発想が、ここ10年間に支配的な研究パラダイムの1つになっている。しかし、組織能力の概念規定に関しては、研究者の間で合意が形成されているとは言い難い。そのために、単なる個別事象の例示以上には、体系的な実証研究は行われておらず、概念だけが拡張しながら一人歩きしているのが現状である。こうした状況を踏まえたうえで、本年度は定量的な実証研究の準備段階とでもいうべき、聞取り調査を行った。
 本年度は、製薬メーカーとレーザー機器メーカーに聞取り調査に出向いたが、それらと以前行った電機メーカーでの調査を総合すると、次のように要約できる。すなわち、技術力に関連しては「特許」が一つの重要な指標になることは間違いない。しかしそれも、研究・開発あるいは製造プロセスの質と量を測定する一指標に過ぎないという見方もできる。しばしば、「潜在能力」という言い方がされるが、ことビジネスの現場的な感覚からすると、顕在化してこそ能力という言い方もできる。そこで、これは従来からの小生の見解であるが、企業・組織の成果・業績を測定する指標を洗い出すことで、そこから逆に組織能力を類推・測定するということが、一つのアプローチではないかと思われる。ただしこれにしても、企業・組織の成果を測定する一義的な指標はない。しかし、会計上の営業権、あるいは近年株価との関連で指摘される「オプション・バリュー」などと関連させながら、定量化の筋道を見つけ出すことを今後の課題としたいと考えている。