表題番号:1999A-137 日付:2004/01/28
研究課題ディジタル技術革新下におけるテレビ放送市場の構造的変化と放送政策の在り方について
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学部 教授 中村 清
研究成果概要
 デジタル技術革新下にあるテレビ放送市場は激しい構造的変化をもたらしている。これまで「心地よき寡占」構造に甘んじてきたテレビ放送メディアはデジタル技術革新による多チャンネル化・高画質化・高機能化によって一挙に競争的な環境に置かれることになった。とりわけ、有料放送の普及によるテレビ視聴の「有料」という概念は、これまで受身的に番組を見るという視聴者の行動に初めて楔を打ち込むことになった。これまで広告収入と受信料によって支えられてきた放送メディア市場は、消費者がその支払意思額に基づいて選択するという経済活動によって大きく変貌を遂げようとしている。1999年度の研究は主として、新しく立ち上がってきた衛星放送、ケーブルテレビ放送における経済学的な問題を対象として研究を進めた。衛星放送についてはプラットフォーム事業者として新たな役割を担う2社(スカイパーフェクTVとディレクTV)の放送市場における機能と役割、また受託放送事業者と委託放送事業者との仲介役としての両社の戦略の違いなどを中心に研究した。とりわけ、こうしたプラットフォーム事業者が放送法上は放送事業者ではないだけに、どのような政策的な対処が可能であるかについて研究を行った。またこれまで経済学的な光が当てられなかったプレミアム番組の供給者である映画産業の市場行動、特にウィンドウズ戦略と呼ばれる異時点間における価格差別を中心に理論的な照射を行ったその研究の成果の一部は論文として発表した。。今後ともコンテンツの二次利用市場の育成がテレビ放送市場の発展のためは不可欠であり、著作権問題を含めてウィンドウズと価格形成のあり方などについて理論的・実証的な研究が必要とされている。さらに私がmoderatorの1人として2年の歳月をかけて企画した国際シンポジウムを3月18日に開催し、放送と通信の融合に伴う放送政策上の課題について研究発表を行った。このシンポジウムは英国とドイツから参加した研究者からも極めて高い評価を受けた。この成果は英語で出版される予定であり、2000年の冬にはこれに関連したワークショップをドイツのボンで行う予定である。