表題番号:1999A-136 日付:2002/02/25
研究課題国際商取引における慣習、慣行の変遷と機能
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学部 教授 椿 弘次
研究成果概要
 従来、貿易取引は概ね単発的契約に属するものとしてとらえられてきたが、貿易と投資が相互に密接に関連する今日の国際取引に照らし合わせれば、長期継続的な契約としてとらえるべきである。このような理解は、近年、強まってきており、長期継続的契約の調整、事情変化への適応問題してしばしば論及されている。
 今回は、主要学説を検討し、取引コミュニケーションが重視されるべきことを説きたいと考えて研究した。そのようなコミュニケーションの基本の一つは、取引関係を重視してそれを柔軟に調整する契約条項の採用、業界の取引慣行、取引当事者間の実務慣行に基づいた取引当事者間の的確な情報交換を求めることができる。そして、取引行為の特定の取引関係における解釈に齟齬をきたさないようにすることである。齟齬が生じたときは斡旋、調停、仲裁などの訴訟によらない方法で解決を図ることが望ましい。このような考え方には関係的契約理論が適用できる。この契約理論を貿易取引に適用すれば、貿易取引は契約理論に基づく説得的コミュニケーションの長期的な国際的ゲームである。ゲームの規則(契約、慣習、慣行など)に対する信頼は、資本的関係、人的関係、需給関係によって保証されている。この保証に頼りすぎて、ゲームの規則をあいまいなままに放置してもいけないし、逆の場合であっても望ましいことではない。事情の変化に柔軟に適応し、地域毎の行動規範の相違を埋めるものとして、ゲームの規則の側からは慣習、慣行の補充的、解釈的機能を研究し、信頼の保証の側からは明確で頻繁なコミュニケーションを調べた。