表題番号:1999A-119 日付:2002/02/25
研究課題多自然居住地域における発展のための新しい取組について
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育学部 教授 宮口 とし廸
研究成果概要
 多自然居住地域とは、新しい全国総合開発計画である「21世紀の国土のグランドデザイン」において、成長する都市とは異なるタイプの発展を実現すべき地域として、中枢・中核都市から遠距離にある中小都市と農山村を想定してつくられた概念である。安易に人口増を望むのではなく、他の地域との連携の中で、土地や資源を従来にない取り組みで活用することにより、レベルの高い生活を樹立していくことがその眼目である。熊本市や福岡市から遠距離にある熊本県小国町は、その資源や自然を活用して、自らの地域をさまざまな交流の場として活用する仕組みをつくり、この時代をリードしてきたが、1997年から、新たに「九州ツーリズム大学」という取り組みを始めた。筆者はこの取り組みが、都市から遠い山村地域において地域がその価値を強力に発揮し、過去にはなかった山村の存在価値をつくり出す画期的な試みであると考え、その実態を調査した。
 この「ツーリズム大学」には99年度までの3期で130人が学んだ。カリキュラムは9月に始まり、毎月1回、3日間の研修を受ける。これを運営するのは小国町北里地区につくられた「財団法人学びやの里」であり、宿泊とメインの研修場所は、以前から交流の拠点となってきた木魂館である。カリキュラムには調査・料理の実習もある。
 参加者の居住地は熊本県のみならず九州北部全域に広がり、福岡市からの参加者も各期にいる。年を追うごとに、ツーリズムに無関係な都市の勤労者が増えてきている。氏らは、自らの人生の新たな可能性を探ることをここでの講座に求めていることが明らかになった。そして卒業生130人のうち28人が、すでに、農家民宿や農家レストランなどの、自然と資源を生かした事業を始めている。都市化に追随するのではなく、都市にたいして新たな役割を果たす多自然居住地域の創造の萌芽が、ここにはっきりと見られるといえる。