表題番号:1999A-115 日付:2002/02/25
研究課題アパタイトの結晶成長における陽イオン効果について
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育学部 教授 堤 貞夫
研究成果概要
 干渉計による成長速度の計測の結果、溶液中のマグネシウム及び亜鉛の濃度増加に従い、水酸アパタイト(0001)面の面成長速度が減少することが判明した。亜鉛の場合マグネシウムの1/1000程度の濃度で、マグネシウムと同程度の成長阻害効果が得られた。マグネシウム、亜鉛両方の場合において、面成長速度の結果はLangmuir kink modelで表されたことから、マグネシウム及び亜鉛は水酸アパタイトに吸着して、面成長を阻害していると考えられる。このような成長阻害効果を原子力間顕微鏡(AFM)により詳しく観察した結果、(0001)面は多重二次元核成長様式で成長しており、マグネシウム及び亜鉛の増加に伴い二次元核サイズの減少(すなわち二次元核のステップ移動速度の低下)が観察され、成長阻害効果が確認された。面成長速度は二次元核のステップ移動速度の関数であるから、ステップ移動速度の低下は面成長速度の低下を意味しており、干渉計による面成長速度の結果に一致する。以上の結果をまとめると、マグネシウム及び亜鉛はLangmuir kink modelに従い、二次元核のエッジにあるkinkに吸着し、二次元核の横方向に対する成長阻害を通じて(0001)面の面成長を阻害していると考えられる。ただし、先に述べたように、亜鉛はマグネシウムに比べて1000倍程度強い成長阻害効果を示していることから、マグネシウムと亜鉛は吸着する場合の化学種が異なっていると考えられる。例えば、マグネシウムはMg2+、亜鉛の場合hopeite;Zn3(PO4)2・4H2O(本研究で用いられた溶液中で安定に存在する)という形態の違いが考えられる。Hopeiteとして吸着した場合、水酸アパタイトとの構造的なミスフィットがおこり、イオンとして吸着する場合より、大きな成長阻害効果が得られるだろう。