表題番号:1999A-112 日付:2002/02/25
研究課題コンパクト曲面の三角形分割上の本質的サイクル
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育学部 教授 鈴木 晋一
研究成果概要
 コンパクトな曲面(=2次元多様体)Mは、組み合わせ多様体として三角形分割可能である。その0次元単体を頂点、1次元単体を辺と考えると、分割Kの1次元骨格は、ある単純グラフGのMへの埋め込みとも考えられる。単純グラフの曲面への三角形分割としての埋め込みの問題は、トポロジーの立場からもグラフ理論の立場からも興味深い研究対象である。
 種数gの向き付け可能な閉曲面M(g)の1次元ホモロジー群は、階数2gの自由アーベル群で、その生成系として、1点で交差する単純閉曲線の対a(k)、b(k)(k=1,2,…,g)で他とは交差しないものを選ぶことができる。本研究では、これらに対応するサイクルを、M(g)の三角形分割G上のサイクルとして、どの程度まで選ぶことが出来るかを明確にするのを目的として、スタートした。残念ながら、まだ当初の目標までは到達していないが、目標に向かって基礎的な成果が少しずつ蓄積されてきた。それらをまとめると、次のようになる:
① 円筒の三角形分割Gには、2つの境界上の点を結ぶ、互いに交差しない3本の道(path)が存在する。
② メービウスの帯の三角形分割Gには、境界上の2点を結び、それに沿って切断しても連結性を保つような3本の道が、端点以外では交差しないように、存在する。
①を利用して、次の③が示された。
③ M(g)の三角形分割Gには、互いに交差しないg本の本質的なサイクルが存在する。これは、研究目標の2g本のサイクルの半分a(1),a(2),…,a(g)の存在を保証したことになる。目標については、g=1,2 の場合以外はまだほとんど分かっていない。今後、この解決に向けて、研究を継続する予定である。また、②を利用して、向き付け不可能な閉曲面についても、1次元ホモロジー群の標準基底との関係で、同様の問題を定式化し、考察していきたい。