表題番号:1999A-103 日付:2002/02/25
研究課題大規模災害時における市民防災活動に関する社会学的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学部 専任講師 土屋 淳二
研究成果概要
 本調査研究では、地域社会の防災化(「防災社会づくり」)に果たす地域住民の自主的な防災活動(広義の「防災ボランティア」活動)の重要性と意義から、当該活動に取り組む住民組織を対象に実態調査ならびに意識調査を実施することによって、地域防災の施策・計画において考慮されるべき実際上の問題点と課題とについて考察することを意図した。自主防災活動に関するこれまでの調査研究は、おおむね次の2つの方法によって防災データの収集が進められてきた。第1の方法は、「実際に発生した個別の災害事例」を調査対象とし、被災地フィールドを中心に展開された緊急時対応について調査データを収集するというもの(「事後的調査」)で、第2のそれは、現実の災害事例とは関係なく、ある特定の地域を調査フィールドとして選定し、当該地域の特性や被害想定を勘案しながら調査データを収集する方法(「事前的調査」)であるが、今回の調査では、①災害に対する地域住民の反応は災害の種類や被害想定、地域の諸特性、平時の防災体制の仕組みとその実際、災害下位文化等によって偏差がみられること、②ある特定の災害事例から引きだされた事後的調査の知見を一般化し、将来の災害対策・防災計画に等しく敷衍して適用することには限界があること、③地域それぞれが抱えている防災上の個別的事情を事前に調査し、そこでえられた地域防災データをもとに地域固有の防災問題について検討する必要があることから、第2の方法を選択した。そして本調査においては、地域住民による自主防災活動の実態と問題を地域社会が備える防災体制全体から俯瞰するために、とくに以下の点に注意をはらった。①調査対象地域の境界範囲を災害対策本部等が設置される区域を基本とすること。②調査対象地域全体に占める自主防災活動を総合評価するため全数調査とすること。③調査対象地域の被害想定や地域特性等に配慮した調査項目を策定すること。④地域自主防災活動に関する先行研究の知見を比較検証しうる調査項目を優先的に採用すること。⑤近年の事例調査から特記すべき調査項目(防災ボランティアなど)を可能な限り盛り込むこと。また本調査では、地域自主防災組織の活動実態と将来の方向性を把握するために、2つの質問項目群からなる調査票([Ⅰ] 地域自主防災組織の人員構成や活動内容など組織体制に関わる項目群/[Ⅱ] 地域自主防災組織リーダーの現況認識や危機感など防災意識に関わる項目群)を用意し、1999年9月、新宿区に所在するすべての防災区民組織を対象に実態調査を実施した(調査対象組織数204;有効回答組織数177)。この調査は、新宿区防災区民組織の全数調査であるので、その調査結果は、単純集計値だけでも区の防災行政にとって参照すべき多くの知見を提供すると考えられるが、なかでも、防災区民組織の形骸化や高齢化、防災ボランティアとの協力体制の展開可能性、活動資金面での問題等に関して、現在、分析作業を進めている。