表題番号:1999A-087 日付:2002/02/25
研究課題中世南仏抒情詩の写本による読み直しの試み
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学部 教授 瀬戸 直彦
研究成果概要
 従来より進めてきた、中世の南仏抒情詩の校訂にかんする私の研究は、(1)フォルケ・ド・マルセイユ(-1231)のC写本による校訂、(2)30に及ぶ詞華集の構成と収める作品の性質の概観、(3)C写本によるトルバドゥールのアンソロジーの作成、という三つの柱をもとにしていた。そのために、各詞華集のマイクロフィルムを、所蔵する図書館からとりよせたり、19世紀以来の文献学による基礎研究の収集と紹介につとめてきた。98年12月のソルボンヌでのコロックでは、これまで顧みられなかったヴァリアントを考慮に入れることで、ジャウフレ・リュデルという詩人の一作品とアベラール・エロイーズ伝説の関連について発表し、とくにイタリア学派(新ラハマン法と呼ばれる、作者による原作の推定法を用いる)に属するペルージ教授の批判を仰ぐことができた。(1)については、したがって、なお方法論の確定に時間を要すると思われるが、(2)と(3)にかんしては、C写本とをもとにした、日本語による詞華集の作成作業を、99年度中にかなり進めることができたと思う。また(4)として、これも基礎作業ではあるが、西欧中世の古文書学にかんして、ビショッフの概説書の翻訳を行い、2000年度中にまとめて出版するつもりである。