表題番号:1999A-081 日付:2002/02/25
研究課題マダガからのアスファルト買い付け
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学部 教授 前田 徹
研究成果概要
 ウル第三王朝時代ウンマの文書に、アスファルトを求めて現在のイラク・キルクーク地方とされるマダガへ行く記録がある。シュルギ王の25、37、38、46年、アマルシン王の1年から9年までの毎年、シュシン王1、2、6、7、8年のものが残されている。マダガ行きは、多く9月から11月に実施され、2~3ケ月程度の旅程であった。
 本課題では、マダガへの人員派遣とその人数や隊編成、それに掛かる経費、アスファルト購入に必要な物品、購入されたアスファルトの管理と利用などを、ウンマ文書から明らかにすることを目的とした。それらの詳細は、『西南アジア研究』第53号(2000)掲載予定の「マダガからのアスファルト」に譲る。
 このアスファルトを取りにマダガへ行くことと、アマルシン8年頃に実際に始まり、シュシン王の最後の年の年名に採用されたシャラ神殿造営とが関係し、その資材集めであるという意見がある。常識的に言えばアスファルトが建築資材として使用されたことは容認できる。しかし、ウンマのマダガ関係資料にはシャラ神殿造営に直接関与する記述はないし、既に述べたようにマダガ行きは限られた年に集中することなく、シュルギからシュシンの治世かけて毎年のように実施されており、それに関与する人も、アマルシンとシュシン治世を通じてアッバギナとルガルイトゥダの二人であり、彼らがシャラ神殿造営用に特別に派遣されたと考える根拠はない。逆に、シャラ神殿造営に関わる資材を文書に追うと、マダガからのアスファルトを含めて色々集められた資材はマルサに一旦置かれ、そこから必要に応じて運び出されている。シャラ神殿の造営とこのマルサに関わるのはルガルニルなる人物であった。彼はマダガ行きとは無関係である。ウル第三王朝時代ウンマの行政管理組織における役割分担を明らかにすることは、この組織の再構成に不可欠な要素であるので、慎重な分析を要する問題である。