表題番号:1999A-052 日付:2002/02/25
研究課題民事訴訟法・国際民事訴訟法における『時間』的価値の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 助教授 勅使川原 和彦
研究成果概要
 法的紛争に関わる当事者の多くが迅速な手続を望んでいるにもかかわらず、従前の漫然とした五月雨審理を許すことは、現在の裁判制度利用者の「迅速な」裁判を受ける権利を害し、かつ潜在的な司法制度利用者の裁判を受ける権利・機会を奪うことにもなる。適正な裁判をするために、可及的速やかに手続を遂行することの必要性は、我が民訴法でも、先般の大改正によって「適時提出主義(156条)」において表明されたが、具体的な集中審理の運用は、依然発展途上であるために、外国の状況を知るべく、まず我が国同様、最近司法改革を行ない、「ファスト・トラック」という迅速手続のルートを新設したイングランドの状況をまずイングランドのソリシタに発表してもらい、私が翻訳ならびに補注を付した。さらに、ドイツの「適時提出主義」との比較も加えて、我が国の「適時提出主義」について、コンメンタール上で発表する予定である(青林書院『注解民事訴訟法』)。また、国際民事訴訟法の問題として、内外国で、内国当事者と外国当事者との間の法的紛争が各々の自国で訴訟係属する、いわゆる「国際的訴訟競合」の問題について、内外手続を時間的価値においても手続そのものの価値においても同一視する根拠は実証されていないことを批判し、提訴における単純な時的優先原則の適用による承認予測説が、時間的・距離的遠隔地間の国際民事訴訟においては、とくに(迅速な)裁判を受ける権利を害することを指摘する論稿を発表した。