表題番号:1999A-047 日付:2002/10/19
研究課題バタイユと社会学
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 教授 吉田 裕
研究成果概要
 1999年度は、特定課題研究の援助に加えて、パリ大学との研究者交換協定に則って、98年9月から99年8月までパリに滞在する機会を持ち、研究をいっそう深めることが出来た。研究者としては、バタイユの初期の文献的研究に業績を上げているJean=Pierre Bouler氏、バタイユの美術への関心について著作のあるVincent Teixeira氏の知遇を得て、多くの示唆と刺激を得た。また、国立図書館で、彼の書簡の手稿を読み、画家マソンとの共作の多くのリトグラフの入った稀覯本を調べることが出来た。加えて、パリに留学中の若い研究者数人と読書会を持つ機会に恵まれ、そこで1939年から1943年ぐらいの間に書かれたバタイユの未完の論考『有用性の限界』を訳することが出来た。これは哲学的思想的考察と社会学的関心がバタイユ特有のやり方で入り交じり、この時期のバタイユの思索の深さと拡がりを示す好例となる著作である。この翻訳は、出版の予定である。なお、この翻訳の解説を、私が担当し、読書会での討論を経て、「謎を解くこと、謎を生きること」の標題でまとめた。この解説は、かなり長いものであるので(400字詰め原稿用紙で90枚)、論文として、まず「人文論集」に発表した。(ただ残念ながら、この翻訳は、翻訳権の関係で、出版することが出来なかった)