表題番号:1999A-046 日付:2002/02/25
研究課題ポストモダニズムの再検討
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 教授 森田 典正
研究成果概要
 まず、ポストモダニズム関係の書物と、ポストモダニズム批判の書物との書誌目録をつくりあげた。目下のところ、かなり包括的なものができたのではないかと思っている。特に、雑誌、新聞等の最近の定期刊行物に掲載された論文・記事については、大英図書館、雑誌・新聞図書館で実地に閲覧し、目録の中に含めた。
 期間としては、最近、約20年間の主要な定期刊行物としたが、結果として480の論文を探すことができた。
 書誌の作成とともに、本研究の主要な課題は、ポストモダニズム批判論をあとづけることにあった。この間、批判論を主として、三つの種類に分けて、それぞれの共通する批判の主旨を抽出することができたと思う。まず、一つ目が、ポストモダニズムが指すところの時期と、そして、それが越えているとするモダニズムとの関わりを問題とすることによって、ポストモダンという概念自体を揺るがそうとする批判である。また、二つ目が、ポストモダニズムの思想的基盤に直接的批判を加えたもので、これについては、1970年代から現在まで、とくに、ヨーロッパでとぎれることなく発表されている。そして、三つ目がポストモダニズムの政治的意味、影響を批判するもので、そのほとんどが、ポストモダニズムと後期資本主義、ネオ資本主義との連携を指摘している。
 現象としてのポストモダニズムは、現在からみて40年前後続いていることになるが、後退する様子をすこしもみせていない。ポストモダンにかわり、ポストコンテンポラリーなる、一知半解な用語さえ使われたことがあったが、現在もポストモダンの時期であることにかわりはない。したがって、ポストモダニズムの批判的検証の必要度は、増しこそはすれ衰えてはいないはずだ。こうした検証のなかで、もっとも注目に値するものとして、社会学者のジークムント・バウマンに注目してみた。戦後50年、バウマンはまずモダニズムを、ついで、最近ではポストモダニズムを、社会思想として追求し続けていて、欧米では今もっとも話題にされることの多い、思想家のひとりである。現在、バウマンの代表作である、Modernity and the Holocaustを翻訳中であり、今年秋には上梓の予定である。また、彼のモダニズム論・ポストモダニズム論の集大成とも呼ぶべき、Liquid Modernityが近々出版される予定であり、こちらの方もゲラ版を著者から頂き、翻訳権を取得している。バウマンの名が、欧米で一般に知られるようになったのは、十年ほど前からであるが、日本ではほとんど無名だといってよい。ポストモダニズムとの関係でも、一刻も早く紹介されてよい思想家であろう。