表題番号:1999A-045 日付:2002/02/25
研究課題冷戦後の安全保障環境の変化とドイツ連邦軍の改編構想
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 教授 水島 朝穂
研究成果概要
 本研究は、特別研究期間制度(在外長期1年)でボン大学に滞在中で行った研究の一部である。本研究を開始したのは、NATO軍のユーゴ空爆(「コソボ戦争」)と同時だった。ドイツ連邦軍もその創設以来初めて、戦闘作戦行動に参加した。新聞を毎日6 紙講読して情報収集を行う一方、ボン軍民転換センター(BCC)やヴィリー・ブラント開発・平和財団(SEF) などを訪問して情報を入手した。この時期、連邦軍構造改革委員会(長・ヴァイツゼッカー元大統領)が立ち上がり、連邦軍の組織改編の議論が進んだ。軍内部の矛盾も進行。「軍人組合」たる「連邦軍連盟」(DBwV)が99年9月、ベルリンで政府批判の大集会(「軍人デモ」)を組織した。朝日新聞ベルリン支局の協力を得て、この集会を取材。同連盟議長ゲルツ大佐の意見も聴取した。また、ドイツ連邦議会防衛監察委員から、99年度の連邦軍内部の問題に関する報告書を入手。連邦軍改編構想に伴う内部矛盾の実態について分析した。さらに、元連邦軍総監のD・ヴェラースホフ退役海軍大将および連邦軍初代総監のU・デ・メジェール退役陸軍大将の二人にそれぞれインタビューした。ヴェラースホフ氏からは、冷戦後の安全保障環境の変化と国際的な緊急援助に関する見解を聞き、デ・メジェール氏からは、「歴史の生き証人」として、連邦軍創設の理念である「内面指導」(「制服を着た市民」)とその今日的意義について詳しく話を聞いた。連邦軍と地方自治体(住民)をめぐる問題の一例として、東部ドイツのザクセン・アンハルト州コルビッツ・レッツリンゲン原野における連邦軍演習場の「民間転換」をめぐる動きを現地取材した。ハルデンスレーベン市の市民組織「開かれた原野」と連邦軍演習場管理部隊将校の双方からも話を聞いた。本研究の費用は関連文献・資料の購入と、ベルリン・ボン間などの交通運賃にあてた。本研究のテーマに関連して、日本の雑誌や新聞社から原稿依頼をされたので、適宜執筆、発表した。