表題番号:1999A-044 日付:2002/02/25
研究課題ドイツにおける演劇文化のパトロネージの歴史(宮廷劇場成立期を中心に)
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 教授 丸本 隆
研究成果概要
 ヨーロッパでは公共機関が演劇文化の保護奨励に積極的に関与するという現象が広くみられるが、とりわけドイツでは大掛かりな演劇支援制度が構築されてきた。本研究者はここ数年来ドイツに焦点を定め、現代ドイツの公的パトロネージの現状と問題点を明らかにしてきたが、この過程で、現今の制度がドイツの歴史的特殊事情と深く絡みあっており、研究の深化のためにはそのルーツや発展のプロセスを追究する必要性のあることを痛感するに至った。そのような観点から本研究は、現代の公立劇場組織の原型ともいえる宮廷劇場の、特にその成立期に焦点を定めた考察を目指そうとした。
 そこで本研究者は、専属劇団と常設劇場を備え宮廷の財政的支援を受ける劇場がドイツに建設され始める17世紀中頃から、全土でそれが50近くに増加し定期的に上演を行うようになる18世紀前半にかけての状況に関して、その成立事情、財政状況、劇団組織、上演形態、パトロンの関与の仕方等、さまざまな角度から調査を試みた。初期の宮廷劇場では、特にドイツの場合、演劇よりもオペラの保護により大きなウエイトが置かれたという点を考慮して、16世紀末にイタリアに誕生し、やがてドイツ語圏に普及していく初期オペラの研究にも力を注いだ。
 具体的な方法として、それらの課題について情報を得るため資料の収集に努めたが、特に本研究課題の遂行を目的に夏期休暇を利用して訪れたドイツでは、ベルリンのフンボルト大学、自由大学、およびフライブルク大学の各種図書館を利用して、このテーマに関する文献を大量に収集することができた。さらにこの旅行の際にベルリンやミュンヘンの旧宮廷劇場を実地に視察したことも、研究を大きく前進させる契機となった。
 以上の作業によって得られた資料をもとに現在執筆が進行している。成果はできるだけ早く具体的な形で(現在のところ形態は未定だが)発表するつもりでいる。