表題番号:1999A-043 日付:2005/12/29
研究課題ヒト遺伝子科学研究と生命倫理
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 教授 戸波 江二
研究成果概要
人クローンの作製が科学技術のレベルで可能とされるなかで、人クローンの作製がどこまで許されるか、人クローン作製の法的規制はどのような根拠に基づいてどのようにして可能か、人クーロン規制立法は憲法違反か、とくに科学技術の研究の自由を過度に制限して違憲ではないか、という観点から、人遺伝子の科学研究の自由とその限界について研究した。とりわけ日本では2000年に「人クローン技術規制法」が制定され、人クローン胚の女性の子宮への移植を禁止するとともに、施行規則で人クローン胚の作製を禁止した。この人クローン規制は、国際的傾向に沿ったものであるが、他方、研究の自由を過度に禁止して違憲ではないかが問題になる。
科学技術の研究の自由は憲法上保障された重要な人権であるが、他方、受精卵の研究目的での利用、人クローンの作製などでは生命倫理のうえで許容されるかどうか、とりわけ「人間の尊厳」を侵すものではないかという疑問もある。その両者の調整の下で人クローン研究の規制が行われるべきであること、規制は基本的部分では法律によるべきこと、「人間の尊厳」は比較衡量を許さない絶対的基準であるので、人クローン規制根拠として援用することが妥当かどうか問題があること、などの結論をえた。
上述の観点からいくつか論文を執筆するほか、私の主宰するドイツ憲法判例研究会とドイツ人憲法研究者(代表:ライナー・ヴァール・フライブルグ大学教授)との間で「科学技術・環境・人間」のテーマで1998年4月の早稲田大学にて行われた共同研究の成果を『人間・科学技術・環境』(信山社、1999年)として出版した。また、第2回共同研究を200年9月フライブルグ大学にて実施した。さらに「科学技術と人間の尊厳」に関して、1999年9月に高麗大学で開催された日韓法学会において報告した。