表題番号:1999A-042
日付:2002/02/25
研究課題経済法・国際経済法の基礎理論的研究Ⅲ
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 法学部 | 教授 | 土田 和博 |
- 研究成果概要
- 本年度の研究課題として取り上げたのは、Rawlsの『正義論』の立場を国際関係に拡延しようとするB.Baryであった。B.Baryは、第1原理=平等の推定、第2原理=個人の責任と補償、第3原理=生存・生活にかかわる利益の優先、第4原理=相互利益を国際社会の正義の原則として掲げ、より直接的に原理を組換えることによって新たな国際的原理を構想しようとする。このうち、第2原理は、暮し向きが異なる人々において、その原因が各自の自発的な選択の結果であるならば、その結果は受け容れることができるものと考える。逆に、各自が防止できないような不幸によって犠牲になった者は、補償(天災などが原因である場合)または救済(他者の自発的な行為が原因である場合)を請求する権利があるとする。また、第3原理は、身体的障害からの安全、健康維持に十分な栄養、飲料水と衛生、気候に適した衣服と住居、医療、教育など、各人の生活・生存にかかわる利益が、誰であれ、それ以外の利益に優先しなければならないという原理である。Baryは4つの正義の原理が世界的に拡張しうると考えていること、Rawlsの格差原理をそれが上の第2原理(個人の責任)に矛盾しうることを理由に拒絶すること、第3原理はラテンアメリカ諸国、インド、中国などにおいては充足されていないとすることなど、独自性の強い主張も少なくないが、基本的にはまさに政治哲学ないし原理論レベルの研究であって、これを現実の国際関係あるいはこれを規律する法にどのように応用できるのかは、なお必らずしも明らかとはいいがたい。経済法・国際経済法の基礎理論的研究にとっては、この点の解明をさらに進めなければならないであろう。