表題番号:1999A-040 日付:2004/11/04
研究課題障害者による公正証書の作成をめぐる法的問題点
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 教授 田山 輝明
研究成果概要
この場合の障害者とは、知的障害者であり、痴呆性高齢者を含む。公正証書が作成されるのは、遺言(検認手続の不要)の場合や任意後見契約(法律上の義務)の場合、さらには金銭消費貸借契約(認諾条項の挿入により強制執行が可能)の場合等である。括弧内の自由が公正証書を利用する理由となる場合が多い。何れの場合にも重要な内容を定めることになるので、作成依頼者本人の意思に基づくことが不可欠である。
そこで、知的障害者や痴呆性高齢者にその内容を理解し、判断することが可能であるかが問題となる。「証書」の作成に当たる公証人は本人の判断能力を確認しなければならない義務を負っているが(ここに公正証書への信頼の源がある)、これが実際にどのように実現されているかは必ずしも明らかではない。
本研究では、この課題につき、公正証書遺言の作成をめぐる裁判例を素材として、任意後見制度との関連で研究を行なった。問題となった裁判例においては、公証人が本人と面接したのはたった15分とというケース等もあり、意思確認に関する状況は深刻であることが判明した。この研究の成果の詳細は、公証法学第32号(2002年12月)に「任意後見制度と公証人の役割」と題して公表されている。