表題番号:1999A-031 日付:2002/02/25
研究課題日本における非正規雇用の法律政策に関する基礎的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 教授 島田 陽一
研究成果概要
 本研究の行われた1999年は、本研究の対象の一つである労働者派遣法の大幅な改正が行われた。このため本件の中心は、今後の非正規雇用の法律政策における同法改正の意義の検討におかれた。1985年に制定された労働者派遣法は、特定の専門的業務および長期雇用システムによる雇用が機能しない分野においてのみ、労働者派遣を合法化するものであった。今回の改正は、対象業務の拡大の要望を受けるなかで、派遣を禁止する業務以外は自由に派遣ができるというネガティブリスト方式に転換するものであった。しかしこの場合には、派遣期間を厳格に1年に限定するという方式がとられた。限定期間を超えた場合には、使用者の雇い入れの努力義務を課した。
 このよう派遣対象が比較法的に例をみないほどに限定されたり、派遣期間を短期間に限定するのは、派遣労働者が正規従業員に置き換えられること、すなわちいわゆる常用代替を回避するためであった。しかし、正規従業員が他の多様な就業形態に取って変わられるという現象は、労働者派遣の利用のみによって発生するわけではなく、パートタイム労働者の利用やアウトソーシングの利用によっても起こることであり、現に起きていることである。従って、常用代替回避は、派遣対象の限定や派遣期間の限定を正当化する理由にはなりがたい。本研究ではさらに、今回の改正が派遣形態で就労を継続することを希望する多くの派遣労働者にとっては、かえって不利益になるものであることを明らかにし、当面の立法改正の課題をまとめたものを早稲田法学75巻3号に公表した。