表題番号:1999A-027 日付:2002/02/25
研究課題刑法および刑事訴訟法改正にともなう中国刑事法研究の中間的総括
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 教授 小口 彦太
研究成果概要
 筆者は、この10年来、「中国刑事法研究」というタイトルで刑法および刑事裁判制度の両面から中国刑事法の思想・思惟様式と制度的構造の特徴と変遷を分析してきた。そこでの研究の枠組みは1979年刑法・刑事訴訟法を前提とするものであった。しかるに、96年に刑事訴訟法、97年に刑法が大幅に改正され、中国刑事法研究に対する一応の締め括りをなすためには、この96年、97年両法の改正点の正確な理解と意義づけをなすこと、そして両法制定以降における新法の実施状況の丹念な跡付けの作業が不可欠である。そこで、まず刑法面からこの作業に着手した。そのさい、98年の比較法学会での報告「中国における刑法改正--罪刑法定原則の採用を中心にして--」を作業の枠組みとして、まず、一、刑法3条罪刑法定原則規定の意義と問題点ということで、(1)中国における罪刑法定概念の内容、(2)「法律」と司法解釈、(3)法の公開化の度合い、(4)刑法3条の射程距離、(5)明確性の程度、(6)罪刑対応原則との関係の諸点について、次に、二、犯罪概念の転換ということで、社会的危害性という実体的概念と違法性という形式的概念の関係づけについて検討をすすめた。具体的作業方法としては、97年以降の刑法関係諸雑誌・著書の中から上記の点に関する理論と資料の収集をはかるという方法をとった(そのうえで、今後は、中国の学者・実務家からの聴取という作業が必要となる)。この両面での作業を通じて、実体法=刑法面での中間的総括が可能となると考えている。2000年は、この執筆にとりかかる。他方、刑事裁判制度については、関係文献の収集にとどまり、まだ十分な分析はなしていないが、裁判制度の構造面での質的な変化は見いだせないとの感を強くしている。