表題番号:1999A-012 日付:2002/02/25
研究課題貨幣金融制度と経済発展
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学部 教授 藪下 史郎
研究成果概要
 本研究で前年度から継続してきた研究成果を「アメリカの貨幣制度の発展」と「制度と経済活動」として発表した。前者では歴史的分析であり、後者は理論的分析である。
 本年度新たに行った研究は「中小企業問題と金融市場」に関してであった。中小企業は政策的な観点から重要な問題であり、かつ最近では中小企業政策の方針が見直されている。しかし伝統的な主流派経済学においては「中小企業問題」というものは分析されず、また「中小企業」に対応する概念も存在しない。本研究では次のことを指摘する。
①企業の規模が小さいこと自体は問題ではなく、何らかの理由によって非効率的な生産しか行われないことに中小企業問題を見出し、それが非対称情報の下での金融市場から生じていると主張する。
②中小企業の中には、現在競争力がないとしても将来有望な企業に成長するものもある。それらの企業は生産活動を通じて技術水準を高め労働の熟練をもたらすため、経済全体の生産性も高まることになる。しかし不完全な金融市場においては、こうした将来性のある中小企業でも資金を得ることが容易ではないのである。
現在こうした観点から論文をまとめたところであり、他の研究者と意見を交換し、さらに改善し刊行する予定である。