表題番号:1999A-010 日付:2002/02/25
研究課題二・二六事件研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学部 教授 堀 真清
研究成果概要
 今回の研究課題は、二・二六事件を惹起した諸要因中、とくに陸軍部内の派閥的抗争に焦点をあてることであった。そのさい、抗争の実態を解明するために必要な史料を渉猟することに特に努め、その結果、次の論稿を完成することが出来た。
(1)「荒木時代と派閥」(早稲田政治経済学雑誌,第337号,1999年1月)
(2)「『陸パン』と永田鉄山」(同上,第338号,1999年4月)
(3)「天皇機関説問題と西田税」(同上,第339号,1999年7月)
(4)「雑誌『核心』と西田税(上)―一九三四年度の時評―」(同上,第340号,1999年10月)
 先ず(1)の論稿においては、派閥の一方の雄である皇道派の内容につき、その首脳の一人、荒木貞夫の思想と政策を中心に解明を試みた。
(2)においては、派閥抗争において皇道派と対抗し、これを追放した統制派の内容につき、その中心的人物の永田鉄山の思想と統制派の主張を要約した「陸パン」(陸軍パンフレット)とを対象に検討した。
(3)においては、皇道派が岡田内閣追及の手段に利用し、一方、統制派はその政争化に慎重な態度をとった天皇機関説問題の社会史的意義を論じた。
(4)においては、二・二六事件の少し前、1934年に西田税らが発刊し、政府攻撃の道具とした雑誌「核心」の内容を紹介し、二・二六事件直前の社会状態、とくに農村問題について、二・二六事件の思想的背景となった西田がどのような見解を抱いていたかを分析した。
(5)なお、このほか、二・二六事件研究に関連し、『宇垣一成とその時代』(新評論,1999年)を編著として刊行した。以上、成果の一端につき報告致します。