表題番号:1999A-008 日付:2002/02/25
研究課題生の哲学再考-ベルクソンとジャンケレヴィッチ
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学部 教授 原 章二
研究成果概要
 ベルクソンからジャンケレヴィッチへの流れ・系譜を追究するためにも、ベルクソン自体、ジャンケレヴィッチ自体の著作の再検討が必要となる。ベルクソンについては、かねてから読み続けていること、全著作がほとんど翻訳されていること、内外の研究書の豊富なこともあって、手掛かりはじゅうぶんだが、ジャンケレヴィッチについては難しい点が多い。なにより、主要著作が翻訳されていない。また、それについての論及も少ない。そもそもジャンケレヴィッチの著作自体が、単に大部であるだけでなく、非常に特異な文体と構成をもっており、一般的な言い方でいえば読みにくい。したがって、今年度はジャンケレヴィッチの代表作のひとつ『なんだかわからないこととほとんど無』を、まずなにより読解することを目標とした。全3巻の構成であるので、第1巻の内容要約を自分なりにつくるかたちで行った。
 現在のところ、成果と呼べるようなものであるかどうかは不安だが、『教養諸学研究』(早稲田大学政治経済学部)に順次発表しつつある。それにより、これまで了解していたつもりのジャンケレヴィッチ哲学のあらたな側面が見えてきたように思う。ごく簡単にいえば、自ら「作家ではなく、語る人である」といっていたジャンケレヴィッチにおける言語意識の鋭敏さ、哲学を言語表現の単なる対象とは見ない屈折した感情と、彼自身の思考のあり方との内的関連性である。今後は、ジャンケレヴィッチの原文の息づかいに即した読解を第3巻までおこなうとともに、そこから見えてくるジャンケレヴィッチ像を、ベルクソン哲学と突き合わせて、研究課題である「生の哲学の再考」を目指していきたい。