表題番号:1999A-005 日付:2002/02/25
研究課題20世紀初頭のヴォルガ流域のドイツ人入植地――社会経済史的考察――
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学部 教授 鈴木 健夫
研究成果概要
 18世紀末にエカチェリーナ2世の政策によって開始されたロシアへのドイツ人入植は、ヴォルガ流域と南ロシアを中心としたが、本研究では、20世紀初頭のヴォルガ流域のドイツ人入植地を対象とし、その社会経済的諸問題、とりわけ土地利用・農村共同体の実態の解明を目的とし、今回の研究助成費は、関連の史料・資料の購入に使用した。蒐集した史料・資料に依拠して研究を進め、まずはヴォルガ流域に点在するドイツ人入植村の所在が明らかとなり、その人口、行政、土地利用、農業生産等についても、部分的ではあるが把握しつつある。南ロシアとは異なり、ヴォルガ流域ではロシア農民に伝統的な共同体的土地利用がドイツ人入植地にも浸透したという興味深い事実も、明らかになった。これには、最近ロシアで活発に公表されつつある関連研究図書・論文が大いに有益であった。なかでも、サラトフ教育大学教授I.R.プレーヴェの著書『18世紀後半のヴォルガ流域のドイツ人入植地』(モスクワ、1998年)は、入植開始期についてであるが、ドイツ人入植地の行政制度と社会経済生活について豊富な事実を提供しており、本研究にとっても多大な示唆を与えてくれた。ドイツ人入植者は、1861年の農奴解放後にロシア帝国の臣民と位置付けられ、その後彼らにたいしてロシア化政策が推し進められるが、20世紀初頭のドイツ人入植地の状況については、当時の数々の調査報告書が重要な史料となる。ロシア的な共同体的土地利用(混在地条制)から西欧的な私的土地利用(区画地制)への移行を試みたストルィピン改革に際しドイツ人入植地がどのように対応したかが本研究の最重要課題であるが、これについては現地での史料調査の必要が痛感される。しかし、現在まで蒐集した史料・資料に依拠し、ある特定の村をとりあげて事例研究を進めており、その成果は論文「ヴォルガ流域のドイツ人入植村ガルカ」として『早稲田政治経済学雑誌』に発表する予定である。