表題番号:1998B-522 日付:2002/02/25
研究課題生理活性物質創製のための新規有機合成反応の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 竜田 邦明
(連携研究者) 理工学部 教授 清水 功雄
(連携研究者) 理工学部 助手 吉本 卓司
(連携研究者) 理工学研究科 教授 山本 明夫
研究成果概要
 1)HIV活性を示すテルペスタシンの全合成と絶対構造決定:テルペスタシンは、二環性5-15員構造を有しているが、D-ガラクトースを不斉炭素源として5員環部分を合成した後、15員環部分を効率よく結合させ、立体配置と置換基を整備して全合成を完成させた。2)N-メチルD-アスパルタート受容体拮抗物質ES-242類の全合成、絶対構造決定および活性発現機構解明:L-ラムノースを原料にし連続するMichael-Dieckmann反応を経てナフトピラン誘導体を合成した後、酸化的カップリングによる二量化を経てES-242-4およびその類縁体を全合成した。軸不斉によるすべてのジアステレオマーの絶対構造を明らかにすると共に、構造―活性相関研究に基づいて二つの水酸基の距離が活性発現の主要因であることを明らかにした。3)海洋防汚物質シデロキシロナール類の全合成と相対構造決定:2-フェニルベンゾピラン骨格をもち、船底や漁網への貝殻の付着を阻害するシデロキシロナール類を生合成類似の反応、すなわち同一系内で生成させたオルトキノンメチドとオレフィンから[4+2]環状付加反応を用いて合成した。従来、生合成過程は知られていたが、生合成類似の有機化学的合成は報告されていなかった。合成後、2,3:3,4-トランス、トランス体が天然からもシデロキシロナールCとして単離され、すべての構造を決定した。4)光学活性なカルバサイクル類の新規合成法の開発:カルバサイクル類の一般的合成を開発し、代表的な天然物を全合成して、その有用性と汎用性を例証した。その鍵反応は、メチルフェニルスルホンをラクトンに反応して得られるフラノース体をシリル化により一段階で開環し、続いて分子内アルドール縮合によって閉環し、シクロヘキセノン体を得る点にある。本方法論を活用して、抗真菌抗生物質ピラロマイシン類の全合成およびグリコシダーゼ阻害物質(+)-バリエナミンおよびバリダミンの全合成を完成した。