表題番号:1998B-520
日付:2002/02/25
研究課題精度保証付き数値計算システムの効率化の研究
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 理工学部 | 教授 | 大石 進一 |
(連携研究者) | 理工学部 | 教授 | 堀内 和夫 |
(連携研究者) | 理工学部 | 教授 | 川瀬 武彦 |
(連携研究者) | 理工学部 | 助教授 | 吉村 浩明 |
(連携研究者) | 理工学部 | 助教授 | 柏木 雅英 |
(連携研究者) | 理工学部 | 助手 | 神澤 雄智 |
- 研究成果概要
- 数値計算における丸め誤差および打切り誤差を勘案して、数学モデルとして与えられた方程式の数学的に厳密な意味での解の存在を数値計算により保証し、数値計算で得られた近似解(以下、数値解と略称する)と真の解との間の誤差のシャープな上限を数値計算することを精度保証付き数値計算という。精度保証付き数値計算は九州大学の須永教授によって1950年代の終わりに提案された区間解析がその基礎となっている日本発の技術である。区間解析では、実数は、その数を内部に含む、両端を浮動小数点数とする区間で近似される。そして、実数の四則演算は区間演算に置き換えられて実行される(区間演算単体では浮動小数点数の四則演算の2から4倍ほどの計算量)。須永の区間演算の提案は外国で認められ、アメリカ、ドイツを中心として精度保証付き数値計算の研究は進展してきた。精度保証付き数値計算の研究の発展は欧米で進められてきたともいえよう。これらの研究は、区間演算ごとに丸めの方向の切り替えをする前提であった。この方法では丸めの制御命令が四則演算ごとで加わることにより、高速化のために高度な調整を行っている従来の数値計算用のプログラム資産が活用できなくなるという欠点があった。本研究では、区間演算を行う際に必要となるCPUの丸め方向の変更命令を、できるだけ、プログラムの外へ出す方式を開発した。すなわち、通常の区間演算では演算ごとにCPUの丸めの方向が切り替えられていたが、本研究では、丸めの方向の切り替えを行列の積の演算の前後で行うことによって線形系の数値解の精度保証ができる方式を提案している。この方法では、連立一次方程式の数値解の精度保証などにおいては、区間演算ごとに丸めの方向が切り替えられていた従来方式に比べて、丸めの方向の切り替えの回数が数回というレベルに減るとともに、行列の積といったBLASの第3レベルの命令をそのまま使えるので、従来の計算機環境の中で、従来の最適化されたプログラムがそのまま使えるようになっている。これにより、精度保証付き数値計算が近似的な数値解を得るための従来の数値計算の計算時間に対して、実速度で7から8倍以内、早い場合には2倍程度で精度保証(近似解を求めることも含めての計算時間)ができることが示された。