表題番号:1998B-513 日付:2002/02/25
研究課題発生におけるポリコーム相同遺伝子群の機能解析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育学部 教授 東中川 徹
(連携研究者) 教育学部 教授 安増 郁夫
(連携研究者) 教育学部 助手 山崎 剣
研究成果概要
(1)マウスPcG相同遺伝子のひとつM33遺伝子の下流遺伝子群を探索し、候補遺伝子を数個見い出した。M33ノックアウトマウスと野生型マウスについてDifferential Display 法により発現パターンの異なる遺伝子を探索した。13.5日胚、生体組織、樹立した培養細胞より抽出したRNAについて蛍光検出による Differential Display 法を約300対のプライマーセットについて行った。見い出された遺伝子について現在性状決定を進めている。
(2)PcG遺伝子 の機能解明を多角的かつ相補的に進めるため、ゼブラフィッシュのPcG相同遺伝子の単離を試み、ショウジョウバエのPc, ph, Pscに対応する3種の構造的相同遺伝子をクローン化した。これらの遺伝子よりコードされるタンパク質間の相互作用を試験管内で調べたところ、ショウジョウバエ、マウス、カエルにおいて見られたのと同様の挙動を示し、機能的にも相同である可能性を強く示唆した。このことは魚類においてもPcG遺伝子群が遺伝子発現パターンの維持、さらには発生における「決定」機構に関与していることを示す。
(3)核タンパク質と考えられていたM33タンパク質が肝臓においては細胞質に局在しており、肝臓細胞が増殖期に入るとリン酸化を受け、かつ核に移行することを見い出した。M33タンパク質はその大部分が静止期の肝臓では細胞質に局在している。核にはごく微量存在し、かつ電気泳動的に移動度が遅い。核に存在する分子種をアルカリフォスファターゼ処理すると細胞質に局在するM33分子と同じ移動度を持つ分子に変化した。肝部分切除を行ったマウスについて調べたところ、細胞の増殖に対応して移動度の変化が認められた。肝切除72時間後、細胞の増殖が低下すると移動度の早い分子種が再び現われた。M33タンパク質は機能時にリン酸化を受け核へ移行し他のPcGタンパク質と複合体を形成すると考えられる。