表題番号:1998B-511 日付:2004/11/18
研究課題フェロモンおよびホルモンによる生殖行動の調節
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育学部 教授 菊山 栄
(連携研究者) 教育学部 教授 石居 進
(連携研究者) 理工学総合研究センター 客員講師 小口 敦子
研究成果概要
 有尾両性類の生殖行動には、化学情報伝達物質として外分泌物質(フェロモン)が重要な役割を担っている。我々は、すでに雄アカハライモリの腹腺より雌誘引フェロモン(ソデフリン)を単離・同定しているが、この物質は同属異種のシリケンイモリには効果がない。シリケンイモリは別の物質をフェロモンとして用いていると推測し、ソデフリンに相当する物質を、遺伝子及びペプチド面から解析を進めた。その結果、すでに得られているソデフリン前駆体cDNAに相当するcDNAが得られ、それにソデフリンとアミノ酸2残基がいれかわったペプチドがコードされていることがわかった。更に、シリケンイモリの腹腺からこのペプチドの単離を逆相HPLCを用いて進め、アミノ酸10残基よりなるペプチドを得た。生物活性を調べた結果、この物質(単離した物質及び合成品ともに)はシリケンイモリの雌に対して強い誘引活性を持つがアカハライモリに対しては活性を示さないことがわかり、種特異性があることが証明された。同物質はN末端のアミノ酸3残基の略号SILとソデフリンの末尾efrinとあわせてシリフリン(silefrin)と名付けられた。更に、ソデフリン及びシリフリン前駆体cDNAをプローブとして用いて前駆体mRNAの発現及び2つのフェロモンの放射免疫測定法による腹腺含量の測定を可能にし、これらを指標にこの2つのフェロモンの合成がいかなるホルモンによって促進されるかを調べた。その結果、プロラクチンと雄性ホルモンの組み合わせで顕著に両フェロモンの合成が促進されることを明らかにした。尚、フェロモンの放出はアルギニンヴァソトシンにより促されること、このホルモンはV受容体を介して作用することも明らかにした。