表題番号:1998B-016 日付:2002/02/25
研究課題日本人英語学習者が誤用する英語の動詞の言語学的分析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 語学教育研究所 客員助教授 ヴィクトリア・ミューライセン
(連携研究者) 教育学部 助手 大和田 和治
研究成果概要
 これまでいくつかの日本人学習者の英語の自動詞用法(非対格動詞)の習得に関するGB理論に基づく第2言語習得研究がなされてきた。しかし、その言語理論と実験方法に問題がないわけではない。我々は、それらの実験に使われてきた文法判断テスト等の問題点を克服するべく、数コマからなるマンガによる自由作文と判断テスト(否のばあいには理由を書かせる)を併用する方法で実験を行った。そうすることによって、S-やD-Structureといった統語構造による説明が、学習者の習得にそのまま当てはまるといった議論の正当性を検証することができると考えたからである。
 被験者は、英語英文学科の学生49人である。対象とした動詞は、a)朝顔の花が開き、しぼむ、b)エレベーターが自動的に閉まる、c)中にいる人がエレベーターを閉じる、d)図書館が閉まっている、e)電車のドアが開閉する、といった場面に用いられるopenとcloseである。実験の結果、1)JLEはNS(英語母語話者)とはかなり異なった心的辞書(mental lexicon)をもっており、JLEの数人が自動詞用法はないと間違えて覚えていたこと、2)朝顔の場面(有生性が高い)では、自由作文で他の場面より、自動詞用法を使う率が高かったこと、3)エレベータや電車のドアの場面では、NSとは異なり、判断テストにおいて高い率で受け身を容認していたこと、4)とくに、電車の場面では、運転手がドアの開け閉めをするということで、受け身を容認しているJLEが多かったこと、5) 図書館の場面で、NSが容認する、it is already closedといった文をJLEの40%以上が容認しなかったこと(alreadyの理解が主な原因)、等が明らかになった。
 今後も、動詞の種類を増やし、JLEとNSの心的辞書を比較検討し、JLEに英語の自動詞用法を教える効果的な方法を考えていきたい。