表題番号:1998B-010 日付:2002/02/25
研究課題交信相手の動画像付加がCSCWの作業効率と親和性に与える影響
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 教授 野嶋 栄一郎
(連携研究者) 人間科学部 教授 佐古 順彦
(連携研究者) 人間科学部 助教授 西村 昭治
(連携研究者) 人間科学部 助教授 齋藤 美穂
研究成果概要
 近年、コンピュータ支援による共同作業(CSCW : Computer Supported Cooperative Work)に対する関心が非常に高まっている。これまでに本研究者らは、2者間による共同作業の1モデルである"囚人のジレンマゲーム"をコンピュータネットワーク上で実現し、交信相手の動画像を付加することが協調的行動にどのような影響を及ぼすか実験的検討を行ってきている(石川・野嶋, 1999)。その結果、動画像付加は利得点表という作業内容の違いによって、協調的行動が促進される場合と、逆に減少する場合があることが明らかとされている。
 これまでの一連の研究では、動画像を作業者自身が自由に呈示したり消去することができない条件で行われてきた。今回は、作業者自身が自由に交信相手の動画像を作業者自身が自由に呈示・消去できる条件を採用して、囚人のジレンマゲームを実施させ、作業者の動画像に対する積極的な働きかけ(呈示・消去)行動が作業効率、親和性という側面にどのような影響を及ぼしているか実験的検討を行った。
 作業効率については協調的行動が多く出現するかという観点で分析した。全般的な傾向では利得点表という作業内容の要因によって作業効率に違いが見られたが、動画像の呈示・消去状態の要因においては違いが見られなかった。さらに、動画像を消去状態から呈示状態に切り替えた後の行動に着目したところ、作業内容の違いによって、協調的行動が促進される場合と、非協力的行動が多い場合に分類されることが示された。一方、親和性については、質問紙による作業者の主観的評価に基づいて分析がなされた。その結果、動画像の呈示が多いほど相手に対して親しみを感じていることが示された。また、作業効率が高くても親しみが高まる傾向が示されており、動画像呈示が直接的に親和性を高めるために有効であったと捉えることができる。以上のように本研究において、動画像を呈示することがあらゆる場面で有効でなかったことが明らかとされた。今後はこれらの知見を考慮し、具体的なCSCW場面に展開し検討を行っていくことが課題である。