表題番号:1998B-002 日付:2002/02/25
研究課題グローバル社会におけるサスティナブル・コミュニティの形成とコミュニティ支援システムのあり方に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学部 教授 浦野 正樹
(連携研究者) 人間科学部 教授 店田 広文
(連携研究者) 文学部 助教授 山西 優二
研究成果概要
 本研究は、グローバリゼーションが進行し社会構造が複雑化・多層化し異質性が増幅してあらわれる環境変化のなかで、個々の社会的ユニット(≒コミュニティ)がある程度の自律性と自己決定権を維持しながら持続的に発展していく方向性を探ると同時に、それに必要なコミュニティ・インフラストラクチャー(施設等のハードな側面や資源・財源・人材・知識等の調達・育成のしくみ等を含む)のあり方を検討することを目的とした。
 結論から言えば、阪神・淡路大震災を契機に、コミュニティのもつ潜在力やコミュニティを基盤にしたさまざまな組織や活動の重要性が注目されたが、同時にそれがより大きな力を発揮するためには、支える制度的枠組みや条件、支援のしくみが必須であることが本研究から明かにされたと言えよう。すなわち、地域のコミュニティ、それと関わる行政、外部からさまざまな形で関与する(専門的知識も持ちうる)各種支援集団の三者が織りなす〈地域活動の展開される空間〉において、どのような連携がなされ、コミュニティの潜在力を引き出し生かしていく〈場〉をどう創造していくか、そのなかでどのように住民の自立を可能にし生活再建を実現するかが、非常に重要な課題として問われてくるのである。
 共同研究のメンバーは本プロジェクトにおいて、阪神・淡路大震災発生以来の、主として地域支援を目的とするボランティア活動、及び生活再建に向けての地域再生プロセスにおいて顕在化する諸課題(避難・救援をめぐる地域の互助的活動から生活支援活動に至るまでのプロセス、土地区画整理事業等の実施に伴う土地の権利をめぐる紛争と調整プロセス、被災生活の支援策や地域の将来像をめぐる対立と合意形成のプロセスを含む、復興政策と住民生活との間で発生するさまざまな社会問題)を明らかにする調査を進め、都市構造内での位置や歴史的規定性を念頭におきながらも、自立し持続的に発展(地域再建)するために不可欠な、地域を再生させていくビジョンや地域アイデンティティの再編・再確認プロセスの重要性を指摘している。本研究の成果は、また、東京及び神戸のインナーエリアにおけるフィールド調査を実施し、戦後の(とくに、高度経済成長期前後における)社会変化を、主として、生活のしくみの違いに基づく多層的な住民階層の生成や再編成が歴史的に展開していく過程として明らかにし、その過程で地域運営や合意形成のシステム、行政との関わり方がどのような変化を遂げ、個別住民の生活問題が地域全体で解決すべき問題群として浮上していくメカニズムを、解明したことにある。